DDTプロレス観戦記

DDTプロレス観戦記   by Fresh Down

 

2月15日、埼玉スーパーアリーナで開催されたDDTプロレスの試合を観てきました。DDTはフットボール部のOBである中澤マイケル選手が所属しているプロレス団体ですが、これまではなかなか観に行く機会がありませんでした。DDTのホームページによると中澤選手はシンガポールでトレーナーの仕事を始めるため、今回の試合を最後に当分の間リングから遠ざかるとのこと。これは是非とも観に行かなくてはと思い、上席ではないものの何とかチケットを入手することが出来ました。
 プロレスの試合を観るのは30数年振り、前回観たのは今は無き田園コロシアムでのミル・マスカラスとジャンボ鶴田戦ですから、本当に久し振りの観戦となります。DDTの試合は昨年テレビで観たことがありますが、昔のプロレスとはかなり違っている印象を受けました。
 昔のプロレスは殆どが外人レスラーと日本人レスラーの対戦となっており、日本人が勝つことで観客が喜ぶと言うパターンが多かったと思います。しかし今回のDDTの場合、他のプロレス団体に所属する選手も多数出ていますが、外人レスラーは一人だけでした。結局日本人同士の対戦となるので、面白い試合となるよう試合方式に色々と工夫していました。
 6人タッグでは元横綱の曙が出ていましたが、今でも流石に大きかったですね。対戦チームにはグレート小鹿の名前が載っていたのですが、二代目かと思いきや正真正銘昔ながらの小鹿選手でした。1942年生まれとのことですから72歳、公演プログラムにも現役最年長レスラーと紹介されていました。流石に曙のような大きな相手とのまともな勝負は出来ませんが、この年齢でリングに上がること自体が凄いことだと思います。他にはヨシヒコなる摩訶不思議なレスラー(?)が出ていましたが、前例の無いレスラーなのでどう説明したら良いのか分かりません。正に「一見に如かず」のレスラーです。
 試合形式も多彩で、1分置きに新しい選手が登場すると言うバトルロイヤル、90秒毎に試合のルールが変わると言う試合、更には2人ずつ4チームが入り乱れ、椅子や机が公認凶器として認められている4WAYタッグマッチ等、アイデアが満載の試合がてんこ盛りです。初めての観戦の私にとっては驚きの連続でしたが、観客は常連客が多いようで皆それぞれの試合を楽しんでいるようでした。
 中澤選手は正月の試合を終えてからシンガポールに行き、今回の試合のために帰ってきたとのこと。試合前にサイン会があり、少しだけですが話をすることが出来ました。予めDDTのホームページで調べておいたので、早めに入場することが出来てよかったです。
 中澤選手の試合は前半戦の最終試合、対戦相手はDDT内のライバルとも言える男色ディーノ選手。リングネームからも想像出来るかと思いますが、どうやら普通のレスラーとはいささか毛色が異なっているようです。でもその点では中澤選手も負けていないようで、それ故ライバルなのかもしれません・・・
 試合は終始中澤選手が有利に進めていましたが、止めを刺せないままディーノ選手の必殺技を喰らってしまい、残念ながら敗れてしまいました。この試合には色黒歌手(失礼!)の松崎しげるさんがセコンドとして付いていましたが、その助言で止めを刺すことをためらったのが敗因となってしまったようです。
 中澤選手はこの試合に勝ってシンガポール行きをためらっている奥様を説得したかったようですが、その計画は予定通りには行かなくなってしまいました。しかし試合後に松崎氏の歌声に合わせて奥様がウエディングドレス姿でステージに登場し、それに気付いた中澤選手が駆けつけて奥様を説得、最後はお姫様抱っこで目出度し目出度し・・・だったのかな?
 休憩後の第一戦には総合格闘家として知られている桜庭和志選手が登場、後半の3試合はストロングスタイルの正統派の試合が続いています・・・と思いきや、桜庭選手の対戦相手の覆面レスラー、新潟プロレス所属と言う「スーパー・ササダンゴ・マシン」選手、これまた摩訶不思議な選手でした。試合前にパソコンと会場の大画面ディスプレイを使ってのプレゼンテーション、難敵の桜庭選手に勝つ方法を紹介していきます。そんなことをしたら試合にならないと思うのはプロレスの素人、それが通用するのがプロレスと言うものです。
 後で調べたらこの笹団子選手のプレゼンテーション、「煽りパラポ」としてネット上で話題になっているそうです。ササダンゴ・マシンで検索すれば動画も見られると思いますから、興味のある方は是非どうぞ。この日のテーマは今話題のピケティ教授の論文を持出し、「プロレス界における格差問題」と言うようなもので、2人の戦力を分析して桜庭選手に勝つための方法を編み出したようです。
 で、その方法はと言えば、バナナの皮で桜庭選手を滑らせてダメージを与えると言うもの。そんな子供だましの方法で、しかも公表しているので転ぶはずは無い、と思うのはやはりプロレスの素人、ちゃんと桜庭選手も転んでくれました。ササダンゴの計画では3回成功すれば勝てる筈だったのですが、3回目は失敗してササダンゴの勝利の夢は春を待たずして融けてしまいました。
 最後の2試合は正しく正統派の試合でしたが、やはりプロレス本来の引き締まった試合がないと繰り返し客を呼ぶことは出来ないでしょう。最後の試合は選手権試合、そしてセミファイナルは4人タッグの選手権、このパターンは昔も多かったような気がします。ただしどちらも昔と違って60分一本勝負と言う試合でした。昔は何故か61分三本勝負と言う試合が多かったのですが、これは外国の有力選手を呼んだ場合、互いに一本ずつ取り合って最後は時間切れ引き分け、と言うパターンにしたい為だったのでしょう。でも61分の「1」分と言うのは何だったのだろう。
 試合開始前と試合後にあったのですが、屋内競技場であるにもかかわらず、花火や火の玉などが打ち上げられていました。埼玉スーパーアリーナはそれが可能なほど、天井の高い大きな競技場と言うことなのでしょう。この会場は初めてだったのですが、これからはこういう大規模な施設が増えていくんでしょうね。
 ただ残念だったのは、平面の床の上に折り畳み椅子を並べただけの会場だったので、リング上の様子が殆ど見えなかったこと。結局大型ディスプレイに映し出される映像を見ることになるのですが、ちょっと角度が浅くなる場所だったので観難いのが悔しい席でした。まあそれでも最近のプロレス会場の雰囲気を十分に感じることが出来たので、行って良かったと思える大会でした。
 DDTは3月29日に後楽園ホールで大きな大会があるようですから、興味のある方は一度観に行ったら良いかと思います。リングに近い席はファンクラブで売切れてしまうかもしれませんが、後方の席でも半日十分に楽しむことが出来ますよ。ただし残念ながら中澤選手はシンガポールに行ってしまうので、この大会には出場できません。
 で、その中澤選手ですが、最後に控え室で休んでいるメインイベントを戦った選手の様子が会場内の大型ディスプレイに映し出され、その脇をウエディングドレス姿のままの奥様が走り抜けていきました。シンガポールには行かな~~い、と叫びながら・・・